11月26日から「東日本大震災復興支援 第65回全日本大学バスケットボール選手権大会」(以下、インカレ)が開幕した。明治大は約2ヶ月に及ぶリーグ戦を12勝6敗で終え、関東3位として出場している。26日(火)の初戦、28日のベスト8決定戦で勝利し、8強にへと駒を進めた。今年のチームに対し”2年目のチーム”と塚本HCや選手たちがよく口にしてきた。昨年の主力メンバーが2、3年生であったため、試合の顔ぶれが昨年と全く変わらず、今シーズンにのぞんでいるからだ。
その”2年目のチーム”も残す所、あと3日。
きれいな道ではないけれど、1歩1歩ずつ彼らは歩んできた。その集大成にぜひ注目してほしい。この特集では、それぞれの振り返りとインカレに向けてのコメントを掲載する。
◆コーチ編(塚本 清彦HC、知花 武彦AC)
~塚本 清彦 HC 編~
塚本HCは今年でチーム就任10年目。ある時、ふともらした言葉がある。
「選手たちにはかわいそうかもしれないが、去年が10年間で一番苦しいシーズンだった」
入替戦でなんとか1部残留を決め、インカレでは大激戦を繰り広げながらも東海大(ベスト8決定戦)の前に涙をのんだ一昨年のシーズンよりもだ。この時は佐藤卓哉、田村、岸本ら軸となる4年生たちがいたからだという。確かに、去年を振り返ると自力で1部残留、さらにインカレ3位という輝かしい成績を残したことにより隠れてはいるが春先の関東トーナメントでは為すすべなく惨敗。さらに試合経験が安藤、中東、皆川の2年生にしかなく、チームの先が全く見えない状況からのスタートだったことを考えると確かにそうかもしれないと思えた。そこから、どうやって今のチームとなったのか。振り返りも含めて”2年目のチーム”についての質問から始めたが、「10年間」という積み重ねがあってこその今年なのだ、ということが強く伝わってくるインタビューとなった。
「ディフェンスというのは1人が手を抜けば他の4人の努力が水の泡になってしまう」
「ディフェンス的な考えができるように取り組んできた2年間」
—今年は”2年目のチーム”という言葉がよく聞かれましたが。
”2年目”というよりも「2年間固定したメンバーで出来る」ということ。ディフェンスのレベルをある程度にまで引き上げないと勝てないと思った。前までなら、田村(2011年度卒)や耕太郎(加藤耕太郎・2012年度卒)、その前なら岩澤(2009年度卒)、英悟(金丸英悟・2009年度卒)とかディフェンスの出来るメンバーがいたのだが、まずはそういったメンバーを作り上げないといけなかった。ディフェンスの苦手なメンバーのレベルをどうやって上げていくかだった。
(写真:インカレ直前の練習試合にて。)
選手たちにも言っているが、ディフェンスというのは1人が手を抜けば他の4人の努力が水の泡になってしまう。だからこそ、ディフェンス練習ではかなり厳しく言ってきた。オフェンスは一種の麻薬みたいな効果があって、誰か得点能力がある奴が出てくるとみんながそれを見てしまうことになる。攻めることをしなくなってしまう。そうじゃないんだ。そういった考えを更生させるのがディフェンスだった。みんなでボールを取って、その大事なボールを持って行って決める。「ディフェンスからでしかオフェンスは存在しない」と。違った考えもあるとは思うが、僕らはそういったディフェンス的な考えができるように取り組んできた。インカレではこの部分においても2年間の成長を見せたいと思う。
「真っ白な所から始まっているわけではない。」
「これまでの積み重ねがチーム・フィロソフィーやチーム・ビルディングの考え方になっている」
—“2年目”について伺いましたが先ほど卒業生の名前が出てきました。これまでにも塚本HCの話を伺っていると、よく卒業生の名前がでてきます。その度に、今このチームを指揮するにあたり、やはり10年間の積み重ねがあってのことなんだと感じていたのですが
そうだね・・・キャプテンだけをあげるとすると、宍戸、高橋、横尾、根岸、伊與田、英悟、晃輔(金丸晃輔)、卓哉(佐藤卓哉)、耕太郎、そして昨年の安藤に今年の森山。そういったみんなが頑張った結果のエキスがある。そのエキスを培養してその後の選手たちに加えていっていると思ってくれていい。
だから、決して真っ白な所から始まっているわけではない。これまでの積み重ねがチーム・フィロソフィーやチーム・ビルディングの考え方になっている。それを思うと、10年とか2年とかいうより、出会った選手たちに明治大に入ってくれて感謝と言う気持ちかな。こちらの厳しい要求にも耐えて、受け止めてくれたし。彼らがいたからこそ今があるわけだからね。彼らがいい選手だったからだと思う。
とにかく上に行けるプレイヤーを作りたい。勝つことだけを求める選手起用ではなく、可能性を求めたい、という想いでやってきた。それだけはブラさずにやってきた10年だったと思う。
「4年生たちには言っている 下の奴に見せていけ、と」
~その積み重ねがある今、このインカレを選手たちにどういった大会にしてほしいですか?
1~3年生の時は「バスケを楽しめ」と言っても違った意味での楽しみ方だと思う。でも、ある程度の段階をクリアしていくと楽しみ方が変わってくる。それを感じてほしいし、1人1人が次につなげていく気持ちでのぞんでほしい。
4年生たちには言っているが「下の奴に見せていけ」と。彼らが1年生の時に何を見ていたのか。金丸晃輔たちを見ていた。そして、3年生には田村や卓哉、行央(岸本行央)がいた。彼らの後ろ姿を見てきたから今の彼らがある。
今回の大会、明治大はチャレンジャーとして挑むことができる。だが、今の4年生たちは3回目の3位以上を目指すわけでそういった意味では飢えているか飢えていないかは非常に大切になってくる。彼らがどういった姿を見せてくれるのか、ぜひ次の代に受け渡せるような姿をみせてほしいと思う。
(写真:これまでの積み重ねの結果を与え続けた選手たちがどう感じ、そうしてどうこのインカレで躍動してくれるのかに期待したい)
~知花 武彦 AC 編~
今年の明治大にとって大きな変化は2人のアシスタント・コーチ(外山 英明、知花 武彦)の加入だろう。それぞれの華々しいバスケ経歴はもちろんのこと、昨年度はWJBLのチームを指導していた存在は選手たちに多くの刺激をもたらしたはずだ。ベンチに戻ってきたインサイド陣に対して声を掛ける外山ACの姿や、タイムアウト中に塚本HCにかわり知花ACが指示を出す場面が多く見られた。ぜひそのベンチワークにも注目していてほしい。今回は、2人の中から知花ACに春先から彼らを見てきた印象とインカレに向けてのコメントを聞いた。
「言わなくてもいいんじゃないかというくらいの細かい所
そこがターンオーバーにつながる」
—昨年度までWJBLの「トヨタ自動車アンテロープス」でコーチをされていましたが、今回学生を教えるのは初めてと伺いました。実際に教えてみての印象は?
はい、初めてですね。…思っていたより力任せにやるというか、粗さが見えた気はしました。出来ることは出来る、けれど細かい所を見ると精度が高められていないな、と目につくようになりました。それで気づいた所は言っていて指導していました。
本当に細かい所なんです。言わなくてもいいんじゃないかって。でも、そういう所が最後ターンオーバーにつながったりするので直さないといけない、気づいてもらないといけないと思って。強いチームはそういう所をしっかりやっているので、彼らにもちゃんと言っていこうと思ってやっていました。
(写真:熱い気持ちがにじみながらもわかりやすい言葉で指導する姿がよく見られた)
「どうやって彼らの頭に残すかを勉強させられた」
—それに対する選手たちの反応は?
個人差はあって、すぐにすっと入っていって実行できる選手もいるし、吸収できない選手もいます。その場合はこちら側の言い方や言葉を変えたり、見方を変えさせるように工夫したり。
自分に反映できない、ということは自分の頭に残っていない、ということですから。どうやって残すかについてはこちら側が勉強させられる、そして勉強しないといけない所ですね。
(写真:この強力なコーチ陣が彼らにどういった後押しをするのか、ぜひ注目していてほしい)
「自分が彼らに出せるものがあるなら全て出していってあげたい」
—そういう工夫をこらしながら、選手たちに指導していたんですね。その彼らに対し、インカレをどう戦ってほしいですか。
出来るだけオフェンスをもっともっとシンプルにやって、ディフェンスにもっと力を出せるようにしてほしいと思います。体力勝負になってくる所もあるので、オフェンスはハードに軽くやるというか、個人でガチャガチャしたタフショットで決めるんじゃなくてパッシングしながらとかカッティングを入れながらとか。
他にもいろいろと教えたいことはありますが、あまりにたくさん言い過ぎるとパンクすることもあると思うので、そこは見極めながらですね。まあ、彼らは私の後輩たちにもなります(※知花ACは明治大卒)。自分が彼らに出せるものがあるなら全て出していってあげたいと思っています。
Written By K
Photo K